伊東ボーイ。

夕方から伊東港で釣りしてて、すっかり日も暮れて堤防には俺１人になりました。
８時くらいかな？俺のいた堤防に、若者が３，４人やってきて。
たぶん１０代後半～２０くらいだろう。
なんつーか。伊東生まれヒップホップ育ち、みたいなね。
悪そうな奴らはだいたいトモダチ！みたいな、な。
ダブダブした服を着てる奴らですよ。金髪なんかにしちゃったりしてね。
「この前のオンナがよー」なんて話しながら、タバコ吸ったりしながら、遊び半分で釣りみたいなことも始めたのかな？
まぁ、ガヤガヤやり始めました。

そのうち、もう１人男の子がやってきてね。
「おせーぞお前」「すみません！」どうやら後輩が呼び出されて来たみたい。
佐野くん。
いやね。そっから「おい佐野！」とか「佐野、一気しろよ～」とか、散々イジられ始めちゃって、しかもなんつーかさ。愛情のあるイジリとかじゃなくて、なんか半分イジメに近いようなさ。
「佐野佐野」みんなに言われてて、思わず俺も名前覚えちゃってさ。
からかわれて笑いものにされて、ちょっとドンクサいタイプなんだろう。
その度に「すみません、すみません」言ってて、なんか可哀想になっちゃってね。
「佐野くん～、こんな奴らと付き合うなよ～」って、そんな事を考えながら、俺は１人で釣りしてました。
もうホント、とにかくバカにされてはペコペコ謝っててさ。

そのうち俺に大きいカマスが釣れてね。
釣った瞬間、堤防にいた猫がまとわり付いてきちゃって「コラコラコラ！」なんて俺が言ってるのを聞いて、何か釣れたって分かったんだろう。
てくてく男の子が歩いてきて、おずおずと「こんばんわ」って。
うわっ！佐野くん来た！
「見せてもらっていいですか？わぁ、大きいですねぇ」なんて。
そらもう優し～く、対応しましたよ。俺は。なんかもう気分的には佐野くんは心の友です。
何の魚ですか？とか、エサは何ですか？とか聞かれたあと、
「実はボク、今日初めて釣りやるんですよ～。いや～、難しいですよね、釣りって。上手くできないです」なんて。

（・・お前が上手くいってないのは人間関係だろ！佐野ー！！）
↑俺の魂の叫び

そのうち向こうから「おーい佐野！」「は、はい！」なんて慌てて戻っていきました。
釣りなんてやってる場合じゃないよ。あんな奴ら置いて早くお家に帰れよ・・

でもなんか思ったんだよね。
真っ暗闇の港で、１人黙々と釣りやってる見知らぬおっさん(←俺)に話しかけてくるなんて、佐野くん、結構すごいじゃないか。
あのヤンキー気取りの連中なんかより、よっぽど勇気あるんじゃないか？
ホントはお前ならつるんだり徒党を組んだりしなくたっていいはずだ。
バカにされる筋合いなんて無いぜ！
だから、うーん・・なんつーか。もうちょっといい連中と付き合ってさ・・その～・・まぁとにかくだ。
ガンバレ佐野くん！！