イメージ。

「鋭利な刃物のようだったあの頃の俺。
　反抗する事だけが、俺の正義だった。
　気に入らないものはすべて叩き壊した。
　大人が決めたルールなんてものには従えなかった」

「そんな俺が惹かれた音楽が、そう。パンクロックだった」
（渡瀬祥之著「アウトローと呼ばれて」より抜粋）



俺にとってはね。パンクやらロックに不良のイメージなんて全く無い。
ほんと～に、まったく。

まぁこのご時勢、みんなで楽しくやろうよ！的な自称パンクバンドが大勢出てきてくれたおかげで、もう大分前からパンクにそんな「危ない」みたいなイメージは無くなっているんだろうが。

そういう意味じゃなくてね。もっと俺個人的な話。

俺がパンクを聴き始めた高校生の頃なんて、小田原って土地柄もあるだろうが、周りにそんなのを聴いてる奴なんか１人もいませんでした。
１人でパンクを聴いてたけど、俺はいたって真面目な高校生。制服だって髪型だって学校規定の通り。
何一つ悪いことなんかしてない。
なんならね。もう笑っちゃうかもしれないけど、学級委員長だったんだから(笑)

もう俺らの頃になると、漫画に出てきそうなリーゼントでケンカっぱやくて、みたいなそんなタイプはいませんでした。
その代わりにいたのが、なんつーかな。イケてる奴ら。っつーか。
クラスでも人気があって、はやりの髪形でファッション誌。制服だってオシャレに着崩して、それで、そう。異性交遊だって当たり前、みたいにね。
でもそういう奴らって、やっぱり「悪い雰囲気」みたいなの出してんだよね。
あくまでオシャレに、悪い雰囲気を。

俺はそういう人たちが、不良なんだと思ってました。
ヤンキーなんて呼ばれる人だと思ってました。
だってやっぱり、タバコとかお酒とか。髪だって染めてるし。
そういうのが不良だよね？だからそう思ってました。

そして、そいつらが聴いてる音楽は、やっぱりオシャレで流行のＪ－ＰＯＰでした。
なんか、わかんないけど、ミスチルとか。そういうやつ（←あくまでイメージ、ホントはもっと違うやつかもしれない）
男女でオールでカラオケ。そこで歌われるＪ－ＰＯＰ。
俺にとっての、不良の音楽ってのは。そういう音楽でした。

もちろんそのＪ－ＰＯＰの数々は、そいつらを惹き付けるような魅力があったんだろう。それなりにいい音楽だったんだろう。
でも、そっちの方面じゃ無い俺は、そんな音楽はよく解らなかった。
Ｊ－ＰＯＰが理解できませんでした。これは俺のせいです。

正直に書けば、そうやってイケてる奴らが、やっぱりうらやましかったです。
クラスの人気者たちが。俺が思う不良の人たちが。
やっぱりみんな、楽しそうに見えたもんな。
もし俺がＪ－ＰＯＰを理解できたら。きっと高校時代の楽しい出来事は１つ増えてたんだと思います。
はなから拒絶したんじゃない。何かが足りない俺には、本当によく解らなかったんです。そんな不良の音楽がね。だって俺、真面目だったからさ。
１つ例を出すなら。
恋愛経験が無いんだから、やっぱりラブソングなんてよく分からないもん。
それだったら、何言ってるが分からないが、とにかく感情みたいなもんがダーッと出てくるような、シンプルで簡単で飾り気ない音楽の方が、俺は理解できた・・じゃないか。理解できた気になれたんだよね。

学校終わったら真っ直ぐ家に帰って、オンボロのドラムをずっと叩いてました。
なけなしの金を持ってＣＤ屋に行って、このＣＤにしようか、あっちにしようか散々悩んで。
買ったやつは、それこそ真剣に聴きました。
俺には２０００円なんて大金だったからね。
いつかカッコいいパンクバンドやるんだ、ってずっと思ってました。

俺には、パンクは真面目な音楽だ。
俺のパンクは真面目な人間がやる音楽。
ね。俺見たら分かるでしょ？
・・いや、そうなんだって。