思い出シリーズ。

俺がまだ TABLOiD PLAY っつーバンドをやってた時の話。
ある時のライブで、ボーカルのあべけんがリハーサルの時からすでに酔っ払ってました。
なんでも、近所でやってたお祭りに行って、そこでしこたま飲んできたらしい。
当然本番、俺らの演奏はボロボロ。当のあべけんはトチリまくった上に「今日は練習」なんぞと言い出してね。
俺は腹立たしいどころか、呆れ返ってさ。

その後、他のバンドも演奏を始めて。
とあるバンドがステージに上がりました。
その筋ではそこそこ名の通ってるバンドで、俺も名前は聞いたことありました。

そのバンドはＭＣで「この間、フジロックフェスティバルに出演した」なんて言ってね。
俺はよく知らないがフジロック、インディーズバンドが出られる枠もあるの？
どうやらそこに出演したみたい。
で、いろいろ話したあと「あそこの客はすごかった。それに比べて今日は・・」なんて言い出してね。
でもその日は、他に人気のあるバンドは無く、お客さんの入りもまばら。
盛り上がってるライブとは言えない訳。
したら曲終わる度に「もっと前来い」だの「東京の客はこんなもんか？」などと言うようになって。
すっげー上から目線で客を煽ってくるのね。
「俺たちは、あのフジロックに出たバンドだぜ？」てなもんなんだろう。
前の方で見てた俺も、こいつら感じ悪いな、なんて思ってたんだが。
そのとき「お前らもっと来いよ！」なんてボーカルの奴が言った瞬間、後ろの方から、グデグデに酔ったあべけんから、大声が飛んできた。

「そんならロックンロールを聴かせてくれ！！」

一瞬フロアが静かになって。「何だあの酔っ払い」みたいになって。
ステージ上の偉そうなボーカルも思わず苦笑いを浮かべてたな。
ライブハウスがすっごい変な空気になったが。
その時思ったんだよ、俺。
あべけん、カッコいいじゃねーか！って。

そういう事だよな。
お前らの音楽、カッコいいかどうか、ノレるかどうか。
そんなもんは俺たちが判断するんだ。
お前がグダグダ言うこっちゃない。
俺らがカッコいいと思えば前行って踊るし、つまんねぇと思ったら突っ立って聴いてる。
それだけの事だよな。

今の俺らのバンド。カッコいいライブやれる、なんて言えたもんじゃなくてね。
ほとんどのお客さんは突っ立って見てる。
ただそれは、俺らの実力が無いってだけ。
そこを無理矢理さ、ねぇ？「盛り上がれ」なんて言ってみたところで、何の意味がある？
俺らはパンクを演奏する。それだけなんだよね。

俺は今でも、いわゆるそういう「偉そうな煽り」みたいなＭＣをするバンドは好きじゃありません。
カッコいいかどうかは、聴いてる奴が判断する。
簡単な事だよ。